【医療界の先輩インタビュー】
村垣善浩教授編③

村垣善浩教授が、医療機器業界を目指す若い力に期待すること

2016年に発表され、大きな話題となったスマート治療室「SCOT (Smart Cyber Operating Theater)」(スコット)の代表研究者として、プロジェクトを牽引する村垣善浩教授。

 

前回の記事では「医師という視点から見た医療機器産業」について、前々回の記事では「SCOT」について語ってもらいました。最終回となる本記事では、これから医療機器業界を目指す人に向けての思いをお話していただきます。

 

【今回お話を聞いた人】

 

私に諦めない心を教えてくれた。印象に残っている医療機器業界の若い力

――これまで関わった医療機器業界で働く人の中で、魅力的だった人や印象に残っている人のことをお聞かせください。

村垣教授「昔、ある医療機器メーカーで働きながら、うちの大学院に通っていた男性です。彼は当時、自分が研究していた「フローサイト」という技術を何かに活かせないかという提案をしてくれました。

 

彼はなんと大学院に在籍している間に約300人の実験データを取り、論文を書き、さらには会社と連携をとって実際に「フローサイトメーター」という機器の製品化まで実現させてしまいました。この機器は10分間くらいで1万個以上の細胞を調べることができ、判断の難しかった病理診断の精度を飛躍的に高めてくれます。

 

これは彼が提案というチャレンジをし、そして真面目にコツコツと実績を積み重ねた成果。私も彼から諦めない心を学びました。

 

これからもチャレンジ精神旺盛な若い方が、たくさん医療機器業界に入って頂けると嬉しいですね」

 

医師も憧れる？医療機器業界で働くことの魅力

――これから医療機器業界を目指す学生に、どのような力を磨いてほしいと思いますか？

村垣教授「医療機器業界で働くには、コミュニケーション能力がとても重要です。SCOTのように、医療機器の開発では医師と開発者が二人三脚で進めていくことも少なくありません。医師の中には寡黙(かもく)で職人気質な人も多いのですが、物怖じせず、疑問に思ったことはすぐ聞くことが大切です。例えば車なら開発する人が自分で運転して確かめることができますが、医療機器業界では開発者が自分で手術をするわけではありませんよね。医師は医学的なアプローチで、開発者は工学的なアプローチで、双方が専門知識を集結して一緒に作り上げていくというのは、医療機器業界特有かもしれませんね。だからこそコミュニケーション能力が必要となります。」

 

――村垣教授が考える医療機器業界での働きがいとは何でしょうか。

村垣教授「医師は自分が手術できる患者さんしか救えません。例えば年間で150件くらいの治療を行って命を救っている医師が、この数を劇的に増やすことは難しいでしょう。しかし、医療機器開発を進めると、非常に多くの命を救うことができます。もし新たな治療技術が開発されれば、その技術が日本、そして世界へと拡がり、医師の”神の手”が必要だった治療をより多くの方が受けられるようになったり、さらにはこれまで医師の“神の手”でも救えなかった命を繋ぐことができたりするでしょう。これは医療機器業界で働く魅力の一つだと思います。」

 

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