【就活生×医療機器 クロストーク】
Vol.2 レポート ①
私たちが医療機器業界に就職した理由
医機なびが企画する、学生と医療機器業界で働く若手社員の交流の場「就活生×医療機器 クロストーク」。好評だったVol.1に続き、今年も開催しました!
【就活生×医療機器 クロストーク】Vol.1 レポート ①
http://www.iryokiki-navi.com/news/p_2265/
2019年の11月某日、東京都内の会場には座長を含む4名の医療機器業界の先輩と、9名の大学生が集まりました。
この会は「企業説明会」ではなく、あくまで「座談会」。座長である昌子久仁子さんの進行のもと、3名の先輩は学生からの様々な質問に答えていきました。
【参加していただいた企業の社員】
高橋 宏美(たかはし ひろみ)さん
会社:株式会社日立製作所
入社年度:2015年
所属部署:グローバルエンジニアリング本部 ビジネス推進部 事業推進グループ 技師
学生時代の専攻:電子通信工学
現在での業務:粒子線治療システムの拡販、案件組成および事業推進
辻 和也(つじ かずや)さん
会社:日機装株式会社
入社年度:2014年
所属部署:メディカル事業本部 メディカル技術センター 技術部 第三グループ 副主任
学生時代の専攻:情報科学研究科 システム工学専攻
現在での業務:海外向け人工透析装置のソフトウェア設計(仕様検討、実装、検証)
橋場 恵美(はしば めぐみ)さん
会社:サクラファインテックジャパン株式会社
入社年度:2017年
所属部署:マーケティング部 プロダクトマーケティンググループ
学生時代の専攻:農学部 海洋生物科
現在での業務:担当商品の営業企画(販売戦略の立案、実施)や市場調査・分析、新商品の企画など
座長・進行役
昌子 久仁子(しょうじ くにこ)さん
所属:公益財団法人医療機器センター 上級研究員
職歴:元 テルモ株式会社 取締役 常務執行役員
※所属、肩書は取材時
巨大なスケール・最先端の開発……。先輩たちが医療機器業界を志した理由
まずは自己紹介を兼ねて先輩社員からご挨拶。同時に、現在の仕事内容と、医療機器業界に就職した理由を語りました。
昌子さん(※以下座長)「私はテルモ株式会社に在籍していたとき、ポンプの力で人工的に心臓を動かす『補助人工心臓』という機器の開発を担当しました。この機器を使うことで、重度の心不全で寝たきり状態だった患者さんが自由に歩けるようになり、生活が豊かになることに大きな喜びを感じました。医療機器業界は人生の質を向上させられる、とてもやりがいのある業界です。」
高橋さん「私は今、株式会社日立製作所で粒子線治療システムの拡販・事業推進を担当しています。粒子線治療システムは、がん治療のなかでも従来の放射線治療に比べて副作用が少ない『粒子線治療』に使うもの。とても大掛かりな製品で、小規模なものでもテニスコートくらいの大きさがあり、価格も1台二十数億円します。学生の頃から医療機器業界には興味がありましたが、新卒の就活のタイミングではなかなかマッチする会社に巡り会えず、一度はバッテリーなどの材料メーカーに就職しました。でもその後、やはり自分が本当にやりがいを感じられる医療機器業界に再びチャレンジしようと転職を決意し、中途採用で弊社に入社しました。」
橋場さん「サクラファインテックジャパン株式会社では、がんの最終診断である病理診断や病理学的検査の分野で使用する装置・消耗品を国内外で製造・販売しています。私が今所属しているのはマーケティング部。新商品の企画や販売戦略の考案、そのための市場調査や分析が主な仕事です。もともと医療に興味があり、子どもの頃からテレビで医療系のドキュメント番組やドラマなどをよく観ていました。大学の就職活動では医療機器を扱う会社を何社か見たなかで、この会社の雰囲気がとても気に入り、入社を決めました。」
辻さん「私は日機装株式会社でメディカル事業に所属し、透析治療に用いる装置を主に開発しています。透析装置は、腎臓の機能が悪くなった方が使う装置で、血液のなかの老廃物や余分な水分を除去します。私は開発チームで装置のソフトウェアを設計しています。就職活動を始めるまで、医療機器業界に興味はなく、ただ何か新しい製品を設計できる仕事をしたいと思っていました。いろいろな企業の面接を受けるなか、今の会社から内定をもらい、働きながら仕事にやりがいを見つけていけるのではないかと、医療機器業界に期待をして就職しました。」
最先端テクノロジーと共に進化する「医療機器業界」
自己紹介の後は学生さんからの質問タイム。「医療業界に興味がある」と話す1人の学生さんからはこんな質問が投げかけられました。
――今開発が進んでいる最先端の医療機器について教えてください
辻さん「今後少子高齢化で医師や看護師の人数が減っていくと予想されるなか、医療従事者の負担を減らすために、これまで手動でやっていた作業の自動化が進んでいます。例えば、治療で医療機器を使う際、その準備工程をオートメーション(※1)で実現するといった機器が該当します。ロボットやAIなどの技術を使い、人手を最小限に抑えるのがこれからの医療機器の大きな使命のひとつです」
※1:オートメーション
人手をほとんどかけずに、機械が自分で調整しながら仕事をする装置
橋場さん「がん診断の領域ではゲノム医療(※2)の進歩が目覚ましいです。がんになった人の遺伝子を検査し、変異を特定することで、その人により適した治療薬や治療方法を見つけられるようになってきています。もしかすると将来的には、子どもの定期検診のときに遺伝子をとって将来どんな病気になりやすいか、傾向を知ることができるようになるかもしれません。人間の体に関することは今後さらに基礎研究が進み、新しいことが明らかになっていくと思います」
※2:ゲノム医療
ゲノムとは、遺伝子「gene」とすべてを意味する「-ome」を合わせた造語。人間の体を作るための設計図のようなもの。ゲノムを分析・解析し、その結果をもとにして、より効率的・効果的に病気の診断と治療を行う
――「粒子線」に興味があるのですが、どのようなことを目標として開発しているのでしょうか?
高橋さん「粒子線治療はメスを使わずにできるガンの治療方法。目指すのは、より体に優しく、負担の少ない治療を提供することです。粒子線は放射線の一種なので、使い方を誤ると正常な細胞も傷つけてしまいます。照射するビームの範囲を限定し、がん細胞にだけに当てることで副作用を最小限に抑えた治療が可能になります。」
座長「粒子線治療システムや病理診断に使う装置、人工透析装置。他にも医療用メスや体温計、注射針やコンタクトレンズも医療機器に含まれます。一言で機器といっても、とても幅広いのが医療機器業界の特徴であり、面白さでもあります。」
心躍る医療機器業界の最先端技術が語られ、序盤から盛り上がる座談会。
レポート②では、「仕事のやりがい」や「職場環境」など、働き方にフォーカスした内容が語られました。
お楽しみに!
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