プログラム医療機器って何?
はじめに
みなさんは、「プログラム医療機器(SaMD)」という言葉を聞いたことがありますか?
プログラム医療機器は英語で「Software as a Medical Device」と言いますので、略称は「SaMD(さむでぃー)」と言います。
この「プログラム医療機器(SaMD)」は、日本においても少しずつ社会に広がり始めていて、注目が高まっています。
今回は、そんなプログラム医療機器(SaMD)についてご説明します。
プログラム医療機器って何?
医療機器にはたくさんの種類があります。
例えば、体温計や人工呼吸器、CT、AEDなど、病気やけがの診断・治療・予防に使用される機械器具としての医療機器もありますが、「プログラム医療機器(SaMD)」はその中でも特にプログラム(ソフトウエア)である医療機器のことを指します。
医師や看護師が使用するものだけでなく、患者さんが使用する「治療用アプリ」と呼ばれるものも存在します。
プログラム医療機器の主な特徴
さて、みなさんはお使いのスマートフォンやパソコンをアップデートしたことがあるのではないかと思います。
プログラム医療機器もソフトウエアですので、アップデートを前提に開発されています。
新しいOSや発見された脆弱性への対応以外にも、最新の技術を取り入れたり新しいデータを覚えさせたりするアップデートにより機能向上を続けます。
プログラム医療機器として実際に使用できるようになるためには、機械器具としての医療機器と同様に薬機法に基づいた承認審査を受ける必要があります。
なぜなら、従来の医療機器と同じく、プログラム医療機器が、人の身体に何らかの影響を与える可能性があるからです。
具体的にはどんな物があるの?
プログラム医療機器には医師による病気の診断を支援するものや、治療用・予防用として医師や患者さんが使用するものがあります。
代表的なものでは、レントゲンやCT、MRI、内視鏡などの体内の状態を見る画像を使って、医師による病気の診断を支援するプログラムや、生活習慣病などの患者さんに処方される「治療用アプリ」などがあります。
具体的な例をあげますと、CT、MRIや内視鏡などで撮影された画像から、がんなどの病気の兆候を発見し、医師による病気の診断を支援する機能を持ったプログラムや、高血圧などの生活習慣病患者さんが自分の状態や食事内容などをアプリに記録し、記録した情報から患者さんに合わせた食事内容などを指導する「治療用アプリ」(医師が処方)などがあります。
なぜ生まれたの?
例えば、医師による診断を支援するプログラム医療機器について考えてみましょう。
人間の能力は人によってさまざまであり、医師も例外ではありません。
病気を診断する力には個人差があり、医師の経験や能力によって、異なります。
一方、プログラム(ソフトウエア)は、画像を大量に学習させることができるディープラーニングと呼ばれる人工知能(AI)技術を活用して、人間が一生かかっても覚えることができないような大量のデータを覚えることができます。
そしてプログラムは覚えたたくさんのデータを元に、病気の特徴を見つけることが得意です。
画像診断支援機能を有するプログラム医療機器と一緒に医師が診断を行うことで、病気の早期発見や、病気の見逃しの減少などにつなげることが期待されています。
次に「治療用アプリ」について考えてみます。
高血圧などの生活習慣病はその名前のとおり生活習慣に起因するものです。
これまでの治療法では薬の服用が一般的でしたが、食事や運動といった根本的な生活習慣を見直さないことには劇的な改善は難しいです。
また、通院の際に医師から生活習慣に関するアドバイスをすることは可能ですが、すべての患者さんの日々の生活習慣を細かくチェックすることは不可能です。
そこで「治療用アプリ」を用いて、アプリが患者さんの食事指導や規則正しい生活への行動変容のサポートなどを行い、さらに、そのデータを医師が確認することで、より適切な指導を行うことが可能となるため、病気の性質に合わせた治療の最適化が期待されています。
おわりに
いかがでしたか。
今回はプログラム医療機器(SaMD)についてご紹介しました。
プログラム医療機器は人間の能力を補ったり、最適な治療方法を提案したりすることで、より良い医療を提供するための道具であることがお分かりいただけたかと思います。
プログラム医療機器は今後ますます開発が進み、より多くの領域における活用が広がっていくものと期待されます。これを機に、みなさんがプログラム医療機器に少しでも興味をもっていただけたら幸いです。
次の記事では、プログラム医療機器と似た概念であるAI医療機器について解説します。
※こちらの記事は『AI医療機器協議会』協賛の記事です。
もっとAI医療機器協議会について知りたい!という方はこちらをご覧ください。