娘の命を救うため小さな町工場が医療機器を開発
映画『ディア・ファミリー』のモデルが語る映画化の裏側

娘の命を救うため小さな町工場が医療機器を開発<br>映画『ディア・ファミリー』のモデルが語る映画化の裏側

2024年614日(金)より全国で公開される映画『ディア・ファミリー』。

 

心臓に先天的な疾患を抱え、余命宣告をされた娘を救うため、小さな町工場を経営する父が、医療に関して全く無縁だった素人の状態から医療機器の開発に挑戦。

 

その結果、製品化されたバルーンカテーテルが17万人もの命を救う

 

この奇跡のようなお話にはモチーフとなった実話が存在します。

 

今回は本作で大泉洋さんが演じる主人公、坪井宣政のモデルとなった、株式会社東海メディカルプロダクツ会長 筒井宣政さんに、映画の制作にまつわるお話を伺いました。

 

お話を聞いた人

 

株式会社東海メディカルプロダクツ 会長(前社長)

筒井宣政さん

 

1941年生まれ 愛知県出身 柔道4段

関西学院大学 経済学部 卒業(昭和39年3月)

株式会社東海メディカルプロダクツ 設立 代表取締役就任(昭和56年10月)

黄綬褒章 受賞(平成14年4月)

叙勲 旭日双光章(平成23年11月)

株式会社東海メディカルプロダクツ 代表取締役退任 会長就任(平成24年12月)

紺綬褒章 受賞(平成29年6月・10月・平成30年9月・令和1年7月)

 

絶対に諦めない家族の挑戦を描いた『ディア・ファミリー』映画化のきっかけ

ーーはじめに、筒井さんとご家族の物語がモデルとなって映画化された経緯を教えてください。

 

きっかけはノンフィクション作家の清武英利さんが私たち家族の歴史に興味をもち、文藝春秋で連載されていたことです。

 

彼は紙とペンを両手に持ち、改まって取材をするようなことは一切ありません。

 

一緒に食事やお酒を楽しみながら、自然な会話のなかから筒井家のこれまでを聞き出してくれました。

 

もう20年以上の付き合いになるので、それなりに深い関係性です。私も心を開いていて、ありのまま語った話がコラムになりました。

 

すると、その記事が東宝の方の目に留まったようです。

 

ーー映画化のお話を受けたときはどのようなお気持ちでしたか?

私が医療機器を開発したことは、我が子の命を救いたいという親として当然の発想で、何も特別なことをしたとは思っていません。

 

そんなことが映画になるのだろうかと、正直不安でした。

 

今から5年ほど前に映画化のお話をいただいてから、コロナ禍になって3年以上もの期間、撮影が中断してしまいました。

 

一度はそのまま制作の話自体立ち消えたのかと思いましたが、東宝さんは脚本を詰めたり衣装を作ったりと、水面下で着々と準備を進めていたようです。

 

 

脚本を読んで「これは違う」と指摘したポイントとは?丁寧な制作過程

ーー映画の制作過程で、作品のモデルとなった筒井さんはどのように関わりましたか?

 

私は題材にしていただいただけで、制作については東宝さんにお任せし、口もお金も出しませんでしたよ(笑)

 

実は「作品のなかに登場してもらえないか」とお誘いもいただきましたが、プロの役者さんたちが本気で取り組む現場に素人が入るなんてとんでもないと、そこはお断りしました。

 

制作スタッフの方が何度も名古屋まで足を運んでくださり、脚本を全て読ませていただいたり、完成前の状態で3回ほど試写会をしていただいたり、丁寧な進め方が印象に残っています。

 

ーー脚本をお読みになって、どのように感じましたか?

清武さんの原作が元になっているので、話の筋は事実に対してとても忠実で安心しました。

 

ただひとつだけ、私がモデルになっている主人公、坪井宣政の名古屋弁がキツすぎたので「もう少し柔らかくならないか」と注文させていただきましたね(笑)

 

東宝さんとしては、地域の特色を出したいという思いがあったようですが、私が使わないような方言もありましたので(笑)

 

最終的にはほとんど標準語に近い言い回しになりました。それでも大泉洋さんの独特の存在感で親しみやすさがありますね。

 

役者と直接会い、熱意と飾らない人柄を実感

ーー今回、出演キャストのみなさんとはお会いになりましたか?

はい。

 

大泉洋さんは撮影に入る前に名古屋までお越しくださいました。

 

マネージャーや関係者は抜きで、1人だけで来られたことが印象に残っています。

 

手にはたくさんのお土産。

 

どれも北海道のお菓子や名産品でした。

 

役を演じるうえで私自身の人となりを知りたいということで、お互いの身の上話から、私が家族や会社の従業員とどんなふうに接しているかなど、いろいろな会話をしました。

 

テレビで観る印象と変わらない、飾らず真面目な方ですね。

 

とても話しやすかったので、途中からは有名人ということを忘れていました。

 

 

ーー他のキャストさんともお話されましたか?

はい。

 

私の家族を演じた菅野美穂さんや福本莉子さん、川栄李奈さん、新井美羽さん、全員と撮影が始まる前に、妻や娘も含めてお会いさせていただきました。

 

大泉さんと同じように、役者さん全員が私たち家族のことを知ろうと熱心に質問をしてくれました。

 

そのなかでも、すでに亡くなっている次女、佳美のことを話し、そこにいる全員で天国の佳美を想ったのは家族にとってもかけがえのない時間でした。

 

役者が想いを一つに演じた『ディア・ファミリー』ぜひたくさんの人に観てほしい

 ーー最後に、本作への想いをお聞かせください。

 

医療についてズブの素人だった私が娘の命を助けるために医療機器を開発したということを賞賛していただくことはこれまでも多く、有難いと思う反面、当時の自分はとにかく必死で「やらない」という選択肢はなく、当たり前のことをしただけです。

 

ですから、以前にも別の制作会社さんから作品化のお話をいただき「そんなに大したことではないので」とお断りしたこともあります。

 

しかし、今回、監督やキャストの皆さんとお話をして、その熱意に胸を打たれました。

 

その想いは、右も左もわからず、がむしゃらに医療機器開発に取り組んだ当時の自分や、それを支えてくれた家族、そして、一致団結した東海メディカルプロダクツの従業員にも通ずるところがあると思います。

 

一足早く試写会で観させていただきましたが、自分たちの歩みを振り返ると同時に、佳美のことを改めて思い出し、込み上げるものがありました。

 

私たちの話を聞き、丁寧に作品を作ってくださった監督やキャスト、制作スタッフの皆さんに改めてお礼を伝えたいです。

 

そして、この作品をぜひ多くの方に作品を観てほしいです。

 

 

映画『ディア・ファミリー』の公式HPはこちら

 

 

後編の記事はこちら

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