映画『ディア・ファミリー』主人公のモデルが、医療機器業界を志すすべての人に伝えたいこと

映画『ディア・ファミリー』主人公のモデルが、医療機器業界を志すすべての人に伝えたいこと

2024年614日(金)より全国で公開される映画『ディア・ファミリー』。

 

本作で大泉洋さんが演じる主人公、坪井宣政のモデルとなった、株式会社東海メディカルプロダクツ会長 筒井宣政さんは、作品のなかで描かれている通り、余命宣告された娘の命を救うために、まったく未経験から医療機器開発をはじめました。

 

一般的には敷居が高いイメージの強い医療機器産業に未経験から飛び込んだ筒井さんの思いや、大切にしている理念、そして、業界に興味をもつ学生に伝えたいメッセージなどをご本人から伺いました。

 

お話を聞いた人

 

株式会社東海メディカルプロダクツ 会長(前社長)

筒井宣政さん

1941年生まれ 愛知県出身 柔道4段

関西学院大学 経済学部 卒業(昭和39年3月)

株式会社東海メディカルプロダクツ 設立 代表取締役就任(昭和56年10月)

黄綬褒章 受賞(平成14年4月)

叙勲 旭日双光章(平成23年11月)

株式会社東海メディカルプロダクツ 代表取締役退任 会長就任(平成24年12月)

紺綬褒章 受賞(平成29年6月・10月・平成30年9月・令和1年7月)

 

素人が医療機器開発に挑戦。「娘の命を助けたい」一心で恥を捨ててゼロから学んだ

ーー筒井さんは医療機器開発に取り組む以前、何をされていたのですか?

 

学生時代は中学時代から始めた柔道に明け暮れる生活で、高校時代には団体で全国優勝を果たした経験もあります。

 

大学は関西学院大学に進学し、経済学部で学んだ後に、愛知県でプラスチック樹脂の加工製品を作る小さな町工場を営んでいました。

 

ですので、医療とは全く無縁でした。

 

ーーそこから娘さんのご病気をきっかけに医療機器産業に飛び込んだと。どのように医療機器のことを学んだのですか?

 医療の研究開発に必要な知識を身につけるために、東京大学で開催された高分子学会内の医用高分子研究会に参加しました。

 

「娘のために必ず開発を成功させる」という自分の熱意に反して、教授の話は専門用語ばかりでまったく理解できず、まるで外国語を聞いているかのようでした。

 

周りの学生からも不思議がられ「どこの学校出身ですか?」と聞かれて、関西学院大学の経済学部と答えると「研究室を間違えていませんか?」と真顔で言われたこともありました。

 

 

それでも恥も外聞も捨てて自分の事情を周囲に全て打ち明け、研究に取り組むと、次第にいろいろな人が力を貸してくれるようになっていったんです。

 

また、医療に関しては何もわからない私でしたが、唯一役立ったのが町工場で培った製造のノウハウです。

 

学会内の研究室では、原材料を作ることはできても、それを使ってモノを作ることはできませんでした。

 

自分の得意領域が製品のプロトタイプを作るときに大いに生かされ、最終的には「高分子学会」で出会った先生の推薦もあり、学会のフェローにしていただくまでになりました。

 

これは自分にとって自信になりましたし、学会で学んだことはその後の医療機器開発を進めるうえでの基礎になりました。

 

医療機器業界には「儲ける」以上にやりがいがある

ーー東海メディカルプロダクツでは「一人でも多くの生命を救いたい」という企業理念を掲げていますね。シンプルですが奥深い想いを感じるメッセージです。

 

創業した当初は娘のための医療機器を開発することが目的で、従業員も身内だけだったので、そのまま「佳美のために」という企業理念でスタートしました。

 

そのうちに事業が少しずつ大きくなり、新しい従業員が増えてきた頃に理念を「患者さんのために」と変更。

 

さらにその視野を広げて現在の「一人でも多くの生命を救いたい」という理念になりました。

 

 

東海メディカルプロダクツを創業して40年以上経ちましたが、変わらないのは組織としての団結力です。

 

開発や技術、製造、営業、さらには経理や総務も、全員が同じ方向を見て一生懸命自分の役を務めています。

 

組織の規模が拡大しても変わることなく、そうした社風が根付いているのは、「佳美のために」という、私の強烈な想いが軸にあり、それが共有されているからかもしれません。

 

改めて、従業員や家族、そして今は天国にいる佳美には感謝が絶えません。

 

ーー素晴らしい組織ですね。長年にわたって医療機器業界に携わってきた筒井さんが考える、業界で働くことの魅力を教えてください。

医療機器は、人間にとって大切な「健康」や「命」を支えるものです。

 

そこに関わることは、自分自身の生きる喜びであり、使命だと感じています。

 

ーーそれは利益を得ること以上の仕事のやりがいかもしれませんね。

 綺麗事に聞こえるかもしれませんが、東海メディカルプロダクツが行ってきた事業のなかで「お金儲け」を目的にしたことは一度もありません。

 

2015年から市販を開始した小児向けのバルーンカテーテルもそのひとつです。

 

利益を追求するなら、全体の市場で考えるとニーズの少ない小児向けの医療機器の開発に多額の資金を投資するという選択はあり得ないでしょう。

 

実際、大手企業も着手してこなかった領域で、開発を始めるときは周囲から批判の声もありました。

 

しかし、必要な医療機器がないことで失われる命があるという事実から、私たちは目を背けてはいけないと考えます。

 

 

加えて、会社としても私個人としても、医療団体や地方自治体といったさまざまな団体に対して年間数億円規模で寄付をしています。

 

自分たちだけの金儲けを考えるのではなく、周りに目を向け、常に社会と繋がっているという意識は、もしかすると今の日本に不足しているかもしれません。

 

 

「困っている人がいれば手を貸す」「欲しがって与えてもらうのを待つのではなく、自分が誰かに与える」という気持ちで行動していると、いざ自分が困ったときも力を貸してもらえるものですし、心豊かに生活できると思います。

 

限りない好奇心と熱意と努力が明日の医療機器業界を支える

ーーありがとうございました。最後に、医療機器業界に興味をもち、この記事を読んでいる学生に向けて、筒井さんからメッセージをお願いします。

 

医療機器業界は、医学や生物学、動物学、科学、物理学、工学、経済学、経営学、語学など、さまざまな知識が役立つ学際的な業界です。

 

さらに、私が業界に飛び込んだときのように全く異なる領域の知識が大いに生かされることもあります。

 

限りない好奇心と熱意と努力をもって取り組めば、必ず周囲が助けてくれるはず。

 

そうすると、いつしか限りないネットワークができ、それは自分自身の財産になるでしょう。

 

私は社員の皆さんによく「無限の好奇心、無限の情熱、無限の努力、無限の友情(ネットワーク)」という言葉を伝えており、これは私の経験からくる言葉です。

 

これから社会人になる学生の皆さんにもメッセージとしてお伝えしたいと思います。

 

 

「誰かのためになる仕事をしたい」と考えているあなた、ぜひ医療機器業界の扉を叩いてみてください。心待ちにしています。

 

 

映画『ディア・ファミリー』の公式HPはこちら

 

 

前編の記事はこちら

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