【コラム】医療機器業界の企業業績は?-2023年度版-

【コラム】医療機器業界の企業業績は?-2023年度版-

こんにちは、医機なび事務局です。

 

就職活動の際、業界・企業研究を進めていくと気になるのが企業の業績。

 

「医療機器業界の企業の業績ってどうなっているんだろう…」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

昨年に引き続き、医療機器業界の業績について、企業の決算短信をもとに集計したMEジャーナル編集長 半田良太さんに教えてもらいました。

 

<参考>前回の内容はこちら

 

医療機器メーカーの2023年度業績と次期業績予想

「医機なび」をご覧の就活生の皆さんは、医療機器業界にどのようなイメージをお持ちでしょうか。

 

一般的には、「人々の健康に貢献できる」といった、社会的意義に興味や魅力を感じる方も少なくないと思います。

 

ただそれだけでなく、他産業に比べて「景気に左右されにくく安定感がある」という特徴も、医療機器業界の過去5年間(予想を含む)の業績の推移から、お判りいただけると思います。

 

医療機器メーカーの「23年度業績」は増収増益

医療機器の電子媒体「MEジャーナル」が、国内で株式を上場する医療機器メーカーの2023年度業績を集計したところ、46社合計で売上高が前期比7.9%増、営業利益は1.5%増となりました。

 

医療機器業界は近年、物価高や医療機器を構成する半導体、素材などの部材の価格高騰などの影響を受けていますが、それを克服し、増収増益を達成しています。

 

それでは、全産業の動向はどうでしょうか。

 

日本取引所グループの「決算短信集計結果」に基づき、国内で株式を上場する3500社の2023年度業績をみると、売上高は4.12%増、営業利益は14.2%増で推移。

 

新型コロナウイルス感染症の影響も収束し、世界景気が堅調に推移したこと受け、業績は改善傾向を示しています。

医療機器業界の営業利益率は10% 他産業上回る水準で“高位安定”

2023年度業績を全産業と単純に比較すると、医療機器業界の業績の伸びは緩やかにとどまっているように見えますが、過去数年の利益率の推移を見ると、その印象は大きく異なります。

 

MEジャーナルが集計した2023年度の医療機器メーカーの平均営業利益率は10.00%。

 

これに対し、日本取引所グループの集計による、全産業の平均営業利益率は6.93%にとどまります。

 

製造業だけを抽出しても、平均営業利益率は7.50%ですから、医療機器業界の“稼ぐ力”は高いと言っても過言ではありません。

 

 

また全産業(製造業を含む)は年度ごとに利益率が上下に大きくブレますが、医療機器業界の営業利益率は2桁台と、比較的高いレベルで安定していることも一目瞭然です。

  

★図表 医療機器業界の営業利益率の推移(全産業との比較)

 

注1)「医療機器業界」の数値はMEジャーナルが調査、計算した。対象企業は45社前後で推移

注2)「製造業」「企業全体」の数値は、日本取引所グループの「決算短信集計結果」から引用

注3)2023年度調査は、「医療機器」46社、「製造業」1405社、「全産業」3500社が集計対象

 

24年度は「40%弱の営業増益見込み」

次期の業績見通しも紹介します。

 

MEジャーナルが24年度決算予想を公表した39社を集計したところ、売上高は6.4%増、営業利益は39.6%増と、4割弱の営業増益を見込んでいます。

 

営業利益率は11.8%と、計算上、前期から2ポイント弱上乗せされます。

 

なお野村證券が今年6月に発表した「企業業績見通し」によると、主要264社(金融を除く)の2024年度の業績予想は、売上高3.3%増、営業利益9.3%増と、医療機器業界に比べて控え目です。

 

医療機器業界は、景気に左右されにくいとされ、医療が必要な患者が増加傾向にあることは間違いありません。

 

 

ただ他産業と同様に外部の経営環境の影響を受けます。

 

とくに為替の急激な変動は、エネルギーや原材料の輸入コストの軽減効果が見込める一方、海外展開に積極的な企業は、円安効果の剥落で収益が減るマイナス面もあるため、不透明な要素があることには注意が必要です。

成長の源泉は「海外」 世界市場は毎年6%成長

最後になぜ、医療機器業界の業績が安定しているのかを補足して、このトピックを〆ようと思います。

 

それは世界人口が高齢化しているためです。市場調査会社のデータによると、医療機器の世界市場は、2019年から2028年までで、年平均成長率が5.8%で推移することが見込まれています。

 

つまり毎年6%弱ずつ、市場が成長するということです。

 

少子高齢化が進む日本もご多分に漏れませんが、国が医療費抑制策を進めていることもあり、年平均成長率は3.3%にとどまります。

 

つまり医療機器業界の「今後の成長ドライバー」は「海外」であることは間違いありません。

 

経済産業省がまとめた「医療機器産業ビジョン2024」でも、「国内市場に依存した産業構造では成長に限界がある」と認めています。

  

 

医療機器業界を希望する就活生の皆さんには、英語などの語学を身につけると活躍の場が広がると思いますのでおススメします。

 

 

【医療機器メーカーの業績についての留意点】

MEジャーナルが調査・集計したのは、20234月期、6月期、7月期、8月期、12月期、243月期の決算を発表した国内で株式を上場する医療機器メーカー。

 

・医療機器以外の事業を手掛ける、いわゆる“兼業メーカー”については、医薬品や化学事業などの売上高も含まれるため、純粋な医療機器の業績を表していない可能性がある。

 

 

<執筆者>

MEジャーナル編集長

半田 良太さん

 

 

いかがでしたか?

 

ヘルスケア・医療機器業界の特徴として「安定的に成長し続けている」、「景気に左右されにくい」ということを聞かれたことがあるかもしれませんが、今回の数字を見るとより実感できるのではないでしょうか。

 

ヘルスケア・医療機器業界は、今後も成長することが予測されております。

 

今回の内容を参考に、今後も業界・企業研究を深めてみてはいかがでしょうか?

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